これまでに、夫婦・カップル間のいろいろなお話を聞いてきて思うこと。カップル間の、性へのスタンスで大事なことって、
相手の気持ちと、自分の気持ちを、同時に大切にすること。
これに尽きると思う。
相手の気持ちと、自分の気持ちを、同時に大切にする道はあるか?を、お互いに考えられること。
これができたら一番いいなと思う。
そもそも、結婚やお付き合いを始めるときって、「あなた以外の異性とは、性的な関係を持ちません」という約束が、その関係に含まれる。(事前に、二人の間で特殊な取り決めをしている場合は除きますが。)
だから不倫はあんなにも叩かれる。
つまり、
私の、性的なことをあれこれする自由があるのは、基本的にあなただけ。
あなたの、性的なことをあれこれする自由があるのは、基本的に私だけ。
他の人ですることはよしとされませんよ、という約束が、すでにその関係に含まれている。
さらに言うと、
相手の「性のこと」を大事にできる他者は自分だけだし、自分の「性のこと」を大事にできる他者はあなただけなのだ
ということになる。そしてこれはもちろん、お互いが自分の性のことを自分で大事にするという姿勢を持ったうえでのお話。
二人の性の関係において、長く一緒にいるといろいろな変化が起こるわけだけど、その度に、『相手の気持ちと、自分の気持ちを、同時に大切にすること。そうできる道はあるかお互いが工夫すること。』がいっそう大事になる。
これが他のことだったらいいのだ。例えば、彼と自分の趣味が相容れない場合、「自分と相手を同時に大切にするにはどうしたらいいか」と考えてみる。
彼と私は音楽の趣味が全然違うので、私は女友達と好きなアーティストのライブに行く。彼はゴルフが好きだけど、私はそうではないから、彼は自分の仲間とゴルフをする。…何も問題ない。
これは実際に我が家の話。私の夫はしいたけが嫌いである。「あー、僕は、しいたけは医者から止められているから…」と毎回わけのわからないことを言うほど嫌いらしい。私はしいたけは嫌いではない。煮物に入っているしいたけ、最高。
ここで、自分と相手を同時に大切にしようと思うとどうなるか。我が家ではしいたけをほぼ買わなくなった。炊き込みご飯のもとに入っているしいたけは、私の機嫌がよければ、できるだけ取り除く。そして、私がしいたけを好きな気持ちは、一人でご飯を食べるときにしいたけ入りのお惣菜を買って満たす。(たまに食べたくなる)…この状態に、私は特に問題を感じていない。
でも、これが性のことになると、途端に大問題になる。
夫と自分の価値観が合わないから、じゃあ第三者を登場させますね、とはいかない。性のことは、趣味の違いや、食べ物の嗜好の違いのようにはいかない。
『相手の「性のこと」を大事にできる他者は自分だけなのだ、自分の「性のこと」を大事にできる他者はあなただけなのだ』
この認識がある人同士が話をすれば、話し合うこと自体はとても大変だと思うけど、
したくない人
したい人
の間でも、きっと前向きな何かが見つかるだろうと思う。もしくは、「解決が難しいね」という結論も、本当は嫌だけれど、仕方ないのかなという気持ちが湧いてくるかもしれない。お互いにできるだけがんばってみたけど、お互い苦しくなっちゃったね…というところまで話せているのなら。
『相手の気持ちと、自分の気持ちを、同時に大切にする道はあるか?を、お互いに考えられること』
『相手の「性のこと」を大事にできる他者は自分だけなのだ、自分の「性のこと」を大事にできる他者はあなただけなのだ』
でも、実際には、この認識・スタンスは、持っていない人が多い。特に、セックスレスの状態で「したくない側」になる方は、こう考えている方はなかなか少ない。
カップル間の性のことで一度でも悩みを抱えた人は、あれこれ試行錯誤しながら、これが大事なんだなっていうところに行きつく。でも、特に悩みなんてなければ、このことを意識することもないかもしれない。
そもそも、性のことで、こういうことが大事なんですよ、なんて、教えられる機会もなかった。どうして、したい人としたくない人の話し合いは、こんなにも悲しい結末になるのかを考えると、「そもそも誰にも教えられてないよね」というのも出てくる。
どちらか一方にこういう認識・スタンスがなければ、
- 大事にしたいのは自分の気持ちのみで、相手には我慢を押し付けてしまう
- 心のどこかで、最終的には相手が変わってくれればいいのにと思ってしまう
- そもそもこの話し合い自体が面倒だから、適当な言葉が口から出る
- 話し合うことが怖いから、我慢してしまう、耐えるしかないと思ってしまう
- 酷ければ、相手の心と身体を深く傷つける言葉が出てしまう
そんなことが起こる。
それもわかる。
もしも私が、「したくない人」なら、相手がこのまま諦めてくれればいいのにと思うかもしれないし、「したい人」なら、こちら側の苦痛を理解したうえで、相手にだって変わってほしいと思うかもしれない。自分だけが変わりたくない、苦労したくないという気持ちがここには隠れている。
相手の気持ちと、自分の気持ちを同時に大事にする。そんな道があるかを考える。
これってとっても、難しいこと。
相手への思いやりと、自分への思いやりとが、同時に必要になる。
残念なのは、今までこういう意識を持ってこなかった人が、「これが大事なんだよ」ってパートナーから話をされたところで、自分の価値観にしみこませることはなかなか難しいということ。
話をする側の「伝え方・話す言葉」をいくら変えたところで、どうにかなるレベルのものでもない。(それでも、何も言わないまま時間だけが経過していくよりは、自分の気持ちを大事にするためにも言うことを私は勧めています)
セックスレスについて、お互いに話すなら、この3種類があるという記事を書いている。
ざっくり言うと、
①相手の価値観を知る・自分の価値観を伝える
→お互いを同時に大事にする意思がまずありますか?を確認する
②歩み寄るための話し合い
→じゃあどうやってお互いを大事にしようかを具体的に考える
③相手との間に線を引くための話し合い
→もうお互いを同時に大事にするのは無理だねという結論に至ったり、そういう状況になった後、自分だけが一方的に我慢をしないために行う
という目的がある。②の話し合いに進めるのは、この「相手と自分を同時に大事にする」ことの大切さに、お互いに気づいている二人だけ。そしてそうできる人たちの数は残念ながらとても少ない。
願わくば。
これから結婚をする世代、これから恋愛をする世代の人たちには、カップル間の性のことは、
『相手の気持ちと、自分の気持ちを、同時に大切にする道はあるか?を、お互いに考えられること』
『相手の「性のこと」を大事にできる他者は自分だけなのだ、自分の「性のこと」を大事にできる他者はあなただけなのだ』
こういう認識・スタンスが大事だよっていうことが、最初から頭に入っていてほしいなと思う。
最近は、そういう内容を発信する若い人も増えているから、以前とは確実に違う状況になっていると思いますが。
あなたは、自分と相手を、どこまで同時に大切にできますか?
セックスレスのことについては、こちらの著書『誰にも言えない夫婦の悩み相談室』でも書いています。
「私の場合はどうしたらいい?」を知りたい方は、個別相談をご利用ください。