セックスレスに悩んだときの話し合いについての続編です。
①の話し合い「相手の価値観を知る・自分の価値観を伝える」についてもう少し書いていきます。
「どんな言葉で伝えたらいいですか?」
「何を話したらいいのかわからなくて困っています」
よくこんなふうにお聞きします。ただでさえ、伝えるハードルの高い内容を、価値観の違う相手に伝えるのですから、何から話そうか迷ってしまうと思います。
ご相談のやりとりでも、相談される方が実際にパートナーに自分の気持ちを伝えるなら、こういう言い方になるかな?というのを、私からお伝えします。違ったらおっしゃってくださいね、と前置きして。
すると、「言いたかったことはそれです」「うなずきながら読みました」「その通りです…」という反応が返ってきたりします。
悩みの渦中で、自分の気持ちをとらえて言葉にするのは難しいことです。それを、できたら傷つけられたくない相手の前で話すのですから、平静ではいられないでしょう。
可能であれば、前もって自分の中で、伝える内容を言葉にする時間をとれるといいですね。以下の一例をお読みいただき、この感じが近いかな、とか、ちょっと違うな、私は〇〇って思ってる…など、ご自身の気持ちをとらえる際の参考にしていただけたらと思います。
この言葉をそのまま伝えればいいというものではなく、ここにご自身の気持ちをさらに足して、自分の言葉にしてみてください。
自分の性の価値観・今の状況への辛さを伝える言葉
『自分はセックスを大切なものだと考えていて、それを大事にしながら人生を生きていきたい人です』
『誰でもいいからしたいのではなく、大切で好きな人としたいと思っている』
『することで、日々の活力を得たり、あなたをもっと大事にしたくなったり、あなたのいろいろなことを許し、受け入れられるようになるし、自分の自信もつくし、嬉しい、幸せな気持ちになる。性欲の発散よりそちらの意味合いのほうが自分には大切である』
(以降の内容については、あなたを責めるつもりじゃないんだけど、今の自分の辛さを言わせてほしい、と前置きしてもいいかも…)
『今は、それが全然ないので、あなたに優しくできない、受け入れられずイライラしてしまう、日常生活のいろんなところにまで影響があって辛い』
『誘われないということは、私には女としての魅力がないのかな?もう飽きたのかな?と思ってしまって辛い』
『結婚した以上、セックスの相手は配偶者のみとなり、あなたがしないのなら、私は一生できなくなってしまう。それが辛い』
『私の人生からセックスを奪われたような気持ちになってしまう』
『こんな気持ちになったことがなくてとても困っている』
ここまでは、自分の性の価値観と、今の状況への辛さを伝えるための言葉です。自分の心のうちを素直にさらす感じの言い方にしています。
前半を読んで「え、こんな恥ずかしいことを言うの?」と思われた方は、これを言いたくないあまり、他の言い方をしてしまう可能性があります。(主には、彼・夫をおおいに責める言い方になってしまいます…)まずは自分の心のうちを素直にさらすことをしてみてほしいと思います。
後半の言葉は、自分の辛さを伝えるものですが、ここで終わってしまうと、相手は「一方的に責められた」と感じてしまいます。
セックスレスの話し合いの一つ目は、「相手の価値観を知る・自分の価値観を伝える」でしたね。ここからはあなたの話を聞くので話してほしいなと切り替えてみましょう。
相手の気持ちを知りたいこと、相手の価値観も大事にしたいことを伝える言葉
『これが自分の価値観だけれど、あなたの価値観は私のとは違うと思うし、どう思っているかを聞きたい』
『このことで、お互いに歩み寄れるのかどうかを判断したい』
『する気のないことをしてと強要されるのもイヤだろうし、こういう話し合いも面倒かもしれないけど、私はあなたとこれからもいい関係でいたいからこうしている』
『すごく勇気を出してこの話し合いをしている、今も緊張するし泣きそう』
『今日答えがすぐにほしいわけではないから、時間が必要なら待つけど、必ずまた話す機会がほしい』
お気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、「なんでしてくれないの?」「なんで私の辛さに気づいてくれないの?」といった言い方は、上にはありません。
これは「相手を責める言葉」「あなたのせいだと伝える言葉」としてはとっても優秀ですが、①の話し合い「相手の価値観を知る・自分の価値観を伝える」にはそぐわない言い方なのです。
なるべく相手が話しやすい雰囲気を作れる言葉を選んでいます。相手に喧嘩腰で突っかかろうと思えば、いくらでもできるでしょう。ここまで相当に悩んでこられているのでそうなってしまうと思います。
でもそれだと、相手からも同じように「こちらを黙らせるための言葉」が返ってきてしまいます。自分の弱いところをそのまま出し、相手から出てきた言葉は「うんうん、それで?」「そう考えてるんだね」と、いったん受けとってください。それを受けての自分の考えは、あとでゆっくりまとめてもいいのです。
いきなり「あなたの性の価値観は?」と聞かれても、悩んでいるこちら側は、このことを日々考えていますが、そうでない彼・夫は、「いきなり何を…?」と思うでしょう。そのことについて日々考えてはいないはずです。
あなたに質問されて、ようやく脳を動かし始めるわけなので、できるだけ具体的な質問を投げかけるようにしてみてください。コツはインタビュー役に徹する、でしたね。
相手の性の価値観を確認するための質問
『自分がしたいときにするものって思ってる?』
『で、今はしたいと思ってない?』
『この状態で十分幸せなのかな?』
『あなたは今の状態でも何も困っていないから、このままが続けばいいなと思ってるのかな?』
※大事な質問です
『家族に見えて出来なくなっちゃったの?』
『女として見れなくなったということ?』
『結婚前と結婚後はもう全然違うって考え方かな?』
『あなたの愛情表現はなに?何をすることがあなたにとっての愛情表現?(自分はここにセックスが入ることも伝える)』
『私に何か不満があったりする?(あえて聞く)』
『仕事で疲れると、欲がなくなるの?』
相手を論破したり、「それはおかしいんじゃない?」「普通はそうじゃないよね」「私はそれでは困る!」と言いたくなってしまうかもしれませんが、まずは相手の価値観についての情報をたくさん集めるようにしてみてください。
相手に確認するべき内容は、こちらの記事でもあげています。
セックスレスがこのまま続くと二人の関係がどうなるかについて、相手に危機感を持ってもらうための言葉
基本的にカップル間のセックスレスのお悩みでは、こんな構図になります。
したくない側→セックスがなくても特に困っていない、今のままでいい
したい側→セックスがなくてとても困っている、今のままが続くのは嫌だ
細かい事情はカップルごとに違いますが、おおまかにざくっとこうなっているはずです。つまり、彼・夫は「このままでいい」と思っている可能性が高いということです。
価値観をある程度インタビューし終わったら、「私はこのままでは困ると思っている」ことをハッキリ言いましょう。ネットであれこれ情報収集するくらい、カウンセラーのブログに目を通すくらい、一人で悩んで困っていることを伝えていいと思います。
いざ事態が深刻になって、したくない側から出てくる事が多い言葉のひとつに、
「そんなに悩んでると思わなかった」
「そんなに真剣に考えてると思わなかった」
「離婚がよぎるほどまで悩んでるなら、もっと早く言ってくれればよかったのに」
というものがあります。「悩んでいる、辛い」と定期的に訴えていてもこういう言葉が出てくることがあります。
話の流れにもよりますが、このままセックスレスの状態が続き、それに対して二人がお互いに歩み寄れないとなると二人の関係がどうなるのか、自分にとっては大きな問題で、それを二人の問題として捉えてほしいことを伝えてください。
『もしも、歩み寄れないのなら、この状態がずっとずっと続くのは、私は辛いし、いずれ離婚も考えることになると思う。私にとってはそれくらいの大きな悩みです』
『あなたが悩んでいる私に対して何もしない、する気がない、そっちでなんとかすればということなら、私も性のことについては自分で自分を大事にしていくし、夫婦間で性は終わりねっていう方向になるかもしれないね』
『歩み寄ることが難しければ、私もあなたへの気持ちを維持するのが難しくなっちゃう』など…。
いずれハッキリ確認したほうがいいこと
先ほど、この悩みでなりやすい構図について書きました。
したくない側→セックスがなくても特に困っていない、今のままでいい
したい側→セックスがなくてとても困っている、今のままが続くのは嫌だ
ついつい話の流れで、「今後セックスできるのかできないのか」のように行為の有無ばかりが焦点になることがあるかもしれません。こちらにそのつもりはなくても、相手がそうとらえる可能性もあります。
しかし、大事な点はもうひとつあります。話し合いの中でいずれそれをハッキリ確認したほうがいいと思います。
同じ、「セックスを含むスキンシップ」というテーマで、現在こうなっているわけです。
彼・夫→このテーマで困っていない
わたし→このテーマで悩んで辛いと思っている
二人の状態にはギャップがありますよね。このギャップのある状態に対して、何か行動しようと思えるか?歩み寄りができそうか?どこまでお互い相手に合わせられるかやってみることができそうか?それともそういう意思はないのか?というのは確認したいところです。
『あなたの希望は日々叶って不満がない裏で、私は同じテーマで悩んで苦しいのがずっと続いているんだけど、それには自分は何もするつもりがないっていうこと?』
『別に自分は何も困っていないから、あなたは辛いかもしれないけど我慢してねって思ってる?』
『自分は変わらない、工夫や努力もするつもりがないということ?』
歩み寄りの意思がない人と、②の話し合いはできません。
なので、ここはしっかり確認が必要です。1回の話し合いではここまで行きつかないかもしれませんが、いずれは聞いておいたほうがいいことです。
ところがこれはいざ明らかにしようと思うと、すごく苦しくなって避けたくなる場合があると思います。そのことを決定的にしてしまったら、もう何もできなくなってしまう、二人の関係に結論が出てしまうのではないか、という怖さが出てくるからです。
ご相談でお聞きする話の中でも、この問いを投げかけたときに相手から返ってくる反応として一番多いのは「無言」です。
無言にはいろいろな意味が考えられますが、「いざ明らかにしようと思うと苦しくなって避けたくなる」というのは、相手のほうでも無意識に起こっていることなのかもしれません。
セックスレスの話し合い①の中、心にとどめておいたほうがいいこと
このテーマについて話すことはとても心に負担がかかると思います。話し合いを始めて、自分の感情が乱れやすくなり、言わない方がいいことを言ってしまったり、相手を責めてしまって、その次の話がしにくくなることもあるります。こちら側がもっておいたほうがいい心のスタンスをいくつかあげてみます。
・相手の反応は相手のもの
・相手をコントロールしない、まずは情報収集をする
→相手の価値観がわからないままだと「こう思っているに違いない」という「決めつけ」をするようになってしまいます。聞き方をいろいろ変えて、相手の言葉で話してもらうようにしてみましょう。
・相手が黙ったらこちらも黙ってみる(ペーシングと言います)
→「どうして何も言わないの?」「どうせこう思ってるんでしょ!」と畳みかけすぎると本格的な喧嘩に発展してしまいます。
・あとで記憶の限りでいいので日付とともにメモを残しておく(自分が話した内容と、相手からの言葉や様子など)お互いの合意ができれば話し合いを録音する
・自分の気持ちは両手にのせてさしだす、投げつけない
・武器を構えないようにがんばってみる(大切な相手だから話すのだ)
・あとで自分をいたわるセルフケアを前もって考えておく
ざっと挙げましたが、このコミュニケーションについては、著書『負けるが花』でも詳しく書いています。
そして、そもそもセックスレスについて話し合うことについて、もっていたほうがいい覚悟はこちらにまとめています。
セックスレスと話し合いのテーマは、こちらの電子書籍にまとめています。(3種類の話し合いを丁寧に書いたら、5種類になりました)読んだ方からは高評価をいただいています!
まとめ
ただでさえ、相手にいろいろ伝えにくいセックスレスの悩み。自分が傷つくのを避けたいと思うと、相手を主語にして決めつけた言い方をしてしまったり、「あなたのせいだ」と言いたい言葉になったり、相手を責めるオーラのみの言葉が出てしまったりします。
実際、そうしたい気持ちもあって当然です。でも、①の話し合いの目的はあくまで「相手の価値観を知る・自分の価値観を伝える」です。
「そういう言い方もあったんですね」
「そう言えばよかったのか…」
というお声もよくいただきます。自分の心のうちをさらす話し方、相手の価値観を尊重する姿勢があることを見せる話し方を、ぜひこの記事の表現を参考にしながら、皆さんの言葉のレパートリーに加えてもらえたらと思います。
話し合う勇気をもったこと、その勇気を出したことがもう偉いです。がんばったね。
セックスレスのことについては、こちらの著書『誰にも言えない夫婦の悩み相談室』でも書いています。
「私の場合はどうしたらいい?」を知りたい方は、個別相談をご利用ください。