セックスレスの悩みがカップル間にあるとき、した方がいい話し合いには3種類あると書きました。
しかしその前にまず「セックスレスについて話し合う」ということについて、書いておきたいと思います。よかったらご一読ください。
セックスレスについて、話し合いをしたほうがいいのか?しないほうがいいのか?そもそも、話し合っていい方向にいくものなのか?
彼・夫とのセックスレスに悩んでいる方なら、一度は考えたことのある内容ではないかと思います。いろいろなご相談をお受けして感じるのは、
ということです。まずいくつかポイントをあげますと…。
・前提として、話し合いしなくてもお互いに不満がなければ、無理に口にしなくてもいい。もちろん普段からカップル間で性のことを話せるに越したことはないが、性教育などの面からみても、それがなかなか難しい場合もある。非言語でできる調整で、いけるところまでいくのが理想ではある。
(※非言語でできる調整とは、相手の雰囲気、様子、反応などをみてこちら側の次の行動を調整すること)
・話し合いが必要になるということは、もう二人がそのステージまできてしまったということ。非言語で調整できる期間は終わってしまったということ。
・話し合ったからといって必ず改善されるものではないし、むしろ「それまであった自然さ」など失うものもあることを知っておく必要がある。
・もう「話し合う」以外にできることが少ないところまで追い込まれている状態である。
厳しい言葉ばかりが並んでいますが、「性のことを大切にパートナーと生きていきたい」という願いを叶えたいと思ったとき、セックスレスで悩んで、話し合ったほうがいいのかな…という状況になってしまった時点で、かなり厳しい状態に追い込まれていると考えていただいたほうがいいです。
「話し合い」にはお互いの意見を交換し、考え方の違いを知り、それをすり合わせていくために必要なプロセス…のようなイメージがありますよね。特に、仕事の場面などではそういう役割があります。
なので、セックスレスの話題に関しても「話し合えばきっといい方向にいくんじゃないか」という期待が、無意識のうちにあると思います。
しかし、ご相談の経験からは残念ながら、「話し合ったからといっていい方向に行くとは限らない」「話し合いの仕方によっては、さらに二人の仲が悪くなる」「話さなければよかったと思うこともある」というように、それさえすればいい方向にいく…というようなものではありません。
ご相談の中でも、「非言語でなんとかなるうちは、非言語で」というスタンスを私もとっています。無理に言葉にしなくていいですとお伝えするケースもあるくらいです。
話し合うことで、「辛さを訴える・責められたように感じる」、「してほしいとお願いする・強制されたように感じる」という関係性ができてしまうことも多々あります。
「話し合ったからといっていい方向に行くとは限らない」と書きました。この理由のひとつは、私たちが、そもそも性のテーマについて話し合い慣れていないからです。
ただでさえ、口に出して言うのが恥ずかしいテーマです。そして、口に出す機会が少ないということは、「私がこう言ったら相手はどう思うのか」というのもわかる機会が少ないということ。話を切り出すのが余計に怖くなります。
また、性のテーマは自分の心と身体にダイレクトにつながるとてもデリケートなものです。性のことは、相手と自分に「同時に」配慮し、大切にするべきものだという共通認識を、パートナーとの間に持つ必要があります。しかし、この認識をあまり重要視していない方が多いです。(教育をされる機会も少ないなと思います…)
性のことについて、その認識をもっていないように思える相手との話し合いはなかなか大変です。相手のちょっとした言葉・ニュアンスで自分が深く傷つく可能性があることを考えると、話しにくくなってしまいますね。
性のことを普段から話し合えているカップルは、希望を伝え合うこともできるし、不満を伝え合うこともできるでしょう。ここには「伝えても相手は私を拒絶しない」「伝えても私は相手に嫌われない」という信頼があるはずです。だから言えるし、相手のことも受け入れようという気持ちになります。
ところが、セックスレスが悩みになっているカップルには、この信頼が足りない状態になっています。自分と相手を同時に大切にするために心を砕かなくてはならないという認識をどちらか一方が持っていない場合、安心して話し合いをすることはなかなか難しいでしょう。
言ったら嫌われるかもしれない。
伝えたら拒絶されるかもしれない。
この話題を出したら、相手が不機嫌になるかもしれない。
こういった気持ちがあるなかでは、話を切り出すことすら躊躇してしまうと思います。
しかし、話を切り出すのが怖いからとずっと話さずにいるとどうなるでしょうか。
おそらく、今と何も変わらない状態が続くことになるでしょう。
悩んでいて、問題だと思っているのが自分だけなのでそうなります。多くの場合、したくない側は、「セックスが無くても特に困っていない。他の表現で、パートナーからの愛情は感じられている。この話題が出ない方が自分には都合がいい」と思っていることがあります。
そんな相手に、ただでさえ口にすることが難しいテーマで向かっていくのですから、気力を使い、心も削られます。決して、やさしい道ではありません。
話し合いをするのは、相手に変わってもらいたいという期待もどうしても含まれると思いますが、「自分の願いや、自分の気持ちを守るため」でもあります。もう話し合うしか自分の気持ちを相手にわかってもらう術がないからそうするのです。
自分の気持ちを一方的に殺さないために、自分自身の「私はここまでがんばった」という納得のために、でもあります。
話し合いの扉を叩こうとするときには覚悟をもって、とおすすめしています。
セックスレスの話し合いをするときに必要な覚悟とは。
話し合いをする前には覚悟が必要になります。おおまかには、次の3つの覚悟です。
- もう話し合いをしなかった頃には戻れない、という覚悟
- あなたが最も欲している「彼は私を求めてくれている」を感じにくくなる状況ができてしまう覚悟
- 彼・夫は今のままでもあまり困っていないのだということを直視する覚悟
ひとつずつみていきます。
①もう話し合いをしなかった頃には戻れない、という覚悟
自分のほうから、ふたりの間にセックスがないのが辛いと話し、今のままではいたくないと伝えたとしましょう。するとその後、彼・夫が何かアクションを起こしてくれたときに、こんな気分になることがあるのではないでしょうか。
「私が言ったから、仕方なくしてくれるんだよね?」
「あなたがしたいからしているわけじゃない…と思ってしまう」
「相手から求められている感じがしない」
「義務でされている気分になる」
「情けをかけられている気がして惨め」
セックスレスについての話し合いをすることで失われるもののひとつは、「自然さ」です。それまで、なんとなく非言語でお互い調整していた頃にあった「自然さ」を失うわけです。
しかしここで、「私が言ったから、仕方なくしてくれてるんだよね?」と言ってしまうとどうなるでしょうか。
彼・夫としては、「セックスがないのが辛い」と言われたから、それを受けて、なんらかの行動をしたわけです。困っているパートナーに応えた形になります。でも「私が言ったから?」「仕方なくしてるんじゃない?」「求められている感じがしない」と言われるとどうでしょう。
え?ないと辛いって言われたから、行動をしたのに、また文句を言われるの?
となってしまいます。言わば、「相手の望みを叶えよう」としている行動なのに、その気持ちを摘んでしまうことになるわけです。
なんだかんだ文句言われるならもういいや、これからは自分から「してもいいよ」っていうサインを出すのはやめよう…となってもおかしくないわけで、チャンスが減っていってしまいます。
言わないでいることが辛いから話し合いをするんだけど、いったん話し合いの段階に入ると、もう、「話しあわないでいた頃にあった自然さ」はなくなってしまう。話し合ったあとは「これまであった自然さ」がなくなったように感じるものだ。自分は上にあげた言葉を言わずにいられるだろうか。実験のつもりで自分を観察してみよう。そう心に留めておく必要がありそうです。
・あなたが最も欲している「彼は私を求めてくれている」を感じにくくなる状況ができてしまう覚悟
一つ目とも関係する内容です。セックスレスで女性が悩むとき、その理由は「セックスがないから」だけではありません。彼・夫からなんだかんだいって一番欲しいものは「彼は私を求めてくれているんだ、必要としてくれているんだという嬉しさ・安心感」なのです。
女性の性欲には「求められたい欲」が多く含まれます。極端なことを言うと、求められている嬉しさ・安心感を感じられれば、セックスという行為を通してでなくてもいい場合もあるくらいです。
ですが、そのふれあいを通す方が好き、ダイレクトにそれを感じられるという効果もあって、行為が必要になります。(もちろんそう考えない方もおられると思います。これは個人の性質によります)
欲しいのは、快楽というよりも性欲の発散というよりも、求められる嬉しさであり安心感なのです。でも、話し合いをすることで「自然さ」を失い、「彼が求めているから」というのを自分が感じにくくなる状況ができてしまうかもしれない。
これは、覚悟をしてほしいなと思います。
話し合いをしようと決めた時点で、かつてあった自然さとはさよならし、「求められている感覚」からは遠ざかる可能性が高くなるのです。
この場合は、彼・夫がこのテーマについて到達できる範囲を一例として頭に入れておく必要がでてきます。
・彼・夫は今のままでもあまり困っていないのだということを直視する覚悟
セックスレスの悩みでしたほうがいい話し合い①相手の価値観を知る・自分の価値観を伝えるをしていくと、だんだんわかってくることがあります。一例をあげると、
悩んでいるのは私だけ
彼・夫は今のままで特に困っていない
だから特に行動が出てこない
彼・夫の性の価値観と、自分のそれは、かなり違っている
他にもいろいろとわかることがあるでしょう。それらは、直視するには、かなり心に負担がかかるものです。
初めのうちは「がんばるよ」と言っていたけど、行動は出てこない
話し合うにつれ、前と違うことを言うようになった
そんなに責めないでほしいとこの話題を避けるようになった
など、最初は解消に向けて動けるのかなと思っていたのに、そうはならなくなっていく場合もとてもよくお聞きします。
「彼は(夫は)どう考えているのでしょうか?」と言われる方もおられます。その際には、上述した「特に困っていないから行動が出てこない、この話題が出ない方がいいと思っている」というのを当てはめてみると、彼・夫の言動に辻褄が合うことがあります。
「私、彼(夫)の心のうちを直視したくなかったのかもしれません」
これは、ご相談の中でよくお聞きする言葉です。なんとかなるかもという期待を持っていたいとき、相手の行動を自分の都合のいいようにとらえてしまうことがあります。
おかしなことではなく、それはそうなるだろうなと思います。だって、この悩みをなんとかしたいし、なんとかなると希望をもっていたいから。
しかし、相手に歩み寄る姿勢が見られず、自分の心も疲弊していくとやはり「本当のところ」を直視せざるを得なくなります。
話し合いを進めれば進めるほど、相手と自分の間にある溝がハッキリし、簡単に埋まるものではないことがわかる…。これは行動をしたからこそわかったことです。話し合いを始めたら、もしかしたら、自分が見たくないものまで見ることになるかもしれない…そんな覚悟が必要になります。
セックスレスの悩みについての話し合いには、何の希望もないのか?
では、セックスレスの悩みに陥り、相手と話し合う必要に迫られたとき、もう何の希望も見いだせないのでしょうか。ここまでを読むと、心を抉られることばかりが書いてあり、話し合わなくても辛い、話し合っても辛い、じゃあどうしたらいいのと思われるかもしれません。
唯一、希望があると言えるのは、①の話し合いをしたときに、したくない側も、このことを二人の問題ととらえ、歩み寄ってみようという意思があるとわかった場合と言えます。
具体的には、
・何かするよ、がんばるよ、と言ってくれる
・カウンセリング、クリニックに行こうとしてくれる
・これが原因かもしれない…など自分の事情を話してくれる
などでしょうか。
「言葉だけではなく行動が伴うかどうか」は最も大事ですので、この時点ではまだ「言葉でそう言ってくれる気持ちがあるんだな」ととらえ、その後の彼・夫の行動を観察する期間が必要になるかと思います。
逆に言えば、この歩み寄ろうとする姿勢(できるかはわからなくても)がなければ、その次にどんな話し合いをしようとも進展は難しいでしょう。
相手に歩み寄る意思があるかどうか、自分と相手の性の価値観は実際どのくらい違うのかを、確認するための話し合いが、「セックスレスの話し合い①相手の価値観を知る・自分の価値観を伝える」です。こちらもぜひ読んでみてください。
悩んでいる側はずっと毎日セックスレスのことが頭にありますが、相手はそうではありません。一度話しただけで諦めなくていいし、話し合うときの心の持ち方もいろいろ工夫できます。そのあたりもまた補足します。
まとめ
セックスレスに悩んだときに相手と話し合いをしようと思うなら、いくつか覚悟しておいたほうをもう一度まとめておきます。
- レス解消のためというより、自分の納得のため、自分の気持ちをないものにしないために話し合いを始めてみる…というスタンスをもつ
- もう話し合いをしなかった頃には戻れない、という覚悟をもつ
- あなたが最も欲している「彼は私を求めてくれている」を感じにくくなる状況ができてしまう覚悟をもつ
- 彼・夫は今のままでもあまり困っていないのだということを直視する覚悟をもつ
もしも、話し合いをしてみて「相手にも歩み寄る意思がある」と分かった場合は、本当に幸運なことです。その後のやりとりでは、「したい側」がうまく自分の感情をコントロールすることや、話す際や日常生活での気持ちの持ち方などがとても大事になってきます。そのあたりはまた別記事で書いていきますね。
セックスレスと話し合いのテーマは、こちらの電子書籍にまとめています。(3種類の話し合いを丁寧に書いたら、5種類になりました)読んだ方からは高評価をいただいています!
セックスレスのことについては、こちらの著書『誰にも言えない夫婦の悩み相談室』でも書いています。
「私の場合はどうしたらいい?」を知りたい方は、個別相談をご利用ください。