彼・夫との間にセックスレスの悩みがあり、それを何とかしたいと思っている場合、果たして相手はどこまで歩み寄りが可能なのでしょうか?また、悩んでいる自分自身もどこまで相手に合わせることができるでしょうか。
(彼、夫=したくない側、わたし=したい側として、まだ解決を諦めたくないと思っている方向けの記事です)
「話し合い①相手の価値観を知る、自分の価値観を伝える」をやってみて、彼・夫の性の価値観もなんとなく聞くことができた。そして、「俺には無理」という態度ではなく、二人の問題として捉えてくれていることも相手から伝わってきた場合、したくない側の状態として、知識としてもっておいたほうがいいことがいくつかあります。
今回は、そのうちの一つをお話します。
もちろんこれは、私が数々のご相談をお受けして感じることを入れた推測でもありますので、最終的には、皆さんが「私のパートナーにはどのくらい当てはまるだろう?」「私の夫は少し違うみたい」というように、目の前のパートナーを見て、判断していく必要があります。
セックスレスのご相談の実際。「私はもう誘われない、求められないのでしょうか?」
ご相談の中でこういうお声を聞くことがあります。
『夫婦間でセックスレスの状態です。話し合ってなんとかしていこうということにはなりましたが、相手からのアクションがほぼなくて悲しいです。私はもう誘われないのでしょうか?』
セックスを含むスキンシップにおいて、女性にとっては「相手が自分を求めてくれている」という感覚はとても大事なものです。
それがあると安心できる、嬉しい、興奮する…と様々な感情につながります。なので、お互いに歩み寄るとなったときに、その感覚をまた彼、夫との間で得られるのだろうかというのは、とても気になるところですね。
彼・夫との間で、セックスレスを二人の問題として捉えて解決できるか試行錯誤してみようとなった場合、したくない側は果たしてどこまで歩み寄れるのでしょうか。どこまで到達できるのでしょうか。
仮に、いったん、このあたりまでだと思ってみてくださいと、ご相談の中でお伝えすることが多いです。
「僕自身にはセックスは必要ないけれど(しなくても問題ないけれど)、彼女・妻がそれを願うなら、叶えてあげたいと思う」
「相手のことは変えられない」というのは、皆さんもよく聞く表現だと思います。セックスに対する相手の感覚や価値観を、こちら側の望むように変えることはできない。難しいことではありますが、それは認める必要があります。
しかし、自分の妻が、恋人が、そのことで心をすり減らして悩んでいる、辛い思いをしている、せめてこうなりたいという願いがある…。それならば、自分の価値観とは違うことだけれど、できるかできないかははっきりわからないけれど、叶えてあげたいと思う…。
したくない側が到達できるのは、まずはこのあたりまでだと私は考えています。この気持ちが相手の中に少しでもあれば、そして、その後お互いが勇気をもって、自分の気持ちを拗れさせず、コミュニケーションを続けることができたら、できる工夫はいろいろあるのではないかと思うのです。
ですので、
- 相手の中にこの気持ちが沸き起こるように、日々の夫婦関係を作っていくこと
- 相手の中にあるこの気持ちが消えるようなやりとりをなるべく避けること
- 相手の中にあるこの気持ちを潰さないでいられるよう、こちら側の気持ちを整えること
これらについて、具体的に今できることは何だろうということを、個別のご相談の中ではとりあげるようにしています。
日常生活ではお互いの雰囲気が悪くギスギスしている、戦いのムードがある…という状況だったら、セックスに関してだけいきなり「妻の願いを叶えてあげたい」と思えるでしょうか。そうではないと思います。夫婦の現状を詳しくお聞きすると、時間をかける必要がある場合も多いです。
こちらの著書を参考にしていただいたほうがいいケースも、ご相談ではよくあります。
「求められたい」が強くなると、相手からの「自分の価値観とは違うけど、相手が望むなら叶えてあげたい」という気持ちを摘み取ってしまうかもしれない。
これを読むと、
- 彼、夫から強く自分を求めてほしい
- 相手から誘ってほしい
- 相手からムードを作ったり、この話題を出すなどの行動をしてほしい
- 過去、二人が性のことでうまくいっていた頃に戻りたい
なるべく短期間でこれが叶ってほしいと思っている方は、がっかりされるかもしれません。
もうすでに長い間、「ない状態」が続いていることによって、したい側の方は歩み寄りを余儀なくされているのです。相手から少しばかりの行動が出てきたとしても「求められる、じゃないもんな…またこちらが譲歩するのか…」と物足りない気持ちになってもおかしくありません。
仮に、上に書いた「自分には必要ないけれど、相手が望むなら叶えてあげたい」という状態に、彼・夫がいるとすると、出てくる可能性のある言動の一例はこうなります。
- こちらから誘ったら応えてくれる
- 話し合いを持ちかけたら聞いてくれる
- 自分ができるかもしれないときに「する?」と問いかけてくる…など
あくまで一例ですが、どれも相手の願いを叶えてあげたいという気持ちがあって出てくる行動です。
しかし、「求められること」「相手から能動的に動いてくれること」が自分の中の基準になっていると、彼・夫からこういった行動があったとしても、心の中で自動的に「~してくれてない」に変換してしまう場合があります。自動的に、です。
こちらから誘ったら応えてくれる
→こちらから言い出さない限り何もしてくれない
話し合いをもちかけたら聞いてくれる
→自分からはこの話題を出してくれない
自分ができるかもしれないときに「する?」と問いかけてくる
→責任をこちらに丸投げしていて、自分がしたいからするという気持ちになってくれていない
こんなふうに見方が変わってしまいます。「~してくれてない」と思うだけでなく、相手にどうしてもひとこと言いたくなったり、不機嫌になって相手からの言動をはねのけてしまうことも出てくるかもしれませんね。
そうなると、「相手が望むならそれを叶えてあげたい」という気持ちは、芽を摘み取られてそれ以上育たなくなってしまうことでしょう。相手に気持ちがないわけではないのに、すれ違ってしまいます。
「相手が求めてくれるかどうか」から、「君が望むならそれを叶えてあげたいという気持ちが、相手の中に見えるかどうか」に、自分の基準を広げられるかは、ゆっくり考えてみてほしいことのひとつです。
「嫌々してほしいわけじゃない」「義務的にされると逆に傷ついてしまう」というお声もよくお聞きします。確かに、この気持ちももっともです。
早く終わりたいと言わんばかりの行為だったり、思いやりや優しさが全く感じられない言動があると、心に新たな傷が増えるだけですし、「相手が望むならそれを叶えてあげたい」という気持ちで動いているんだなとは、思いにくいでしょう。
あまりにもその傾向が強い場合は、彼・夫も自分の限界を超えて余裕をなくし、無理をしているのかもしれません。
「君が望むならそれを叶えてあげたい」を二人の間に保ちやすくするには?
では、彼・夫の「君の願いを叶えてあげたい」という気持ちをつぶさないためにも、自分の考えを少しゆるめてみるにはどうしたらいいでしょうか。
私からおすすめしたいのは、「自分の中で完璧主義の要素が強くなっていないかチェックしてみること」そして「(様々なことへの)ハードルを下げてみること」です。
相手が歩み寄ってくれる=自分の思った通りになる、ではありません。これは、頭では理解しているはずなんだけど、何度も何度も心の中に出てきてしまうことです。
自分の思い通りになればいいのになぁ。
また、そうはならなかったなぁ。
私のほしい「これ」じゃないと意味がないんだよなぁ。
また今日も「これ」は手に入らなかった…。
例え、相手が歩み寄る気配を見せてくれたとしても、自分のほしい「これ」はずっとやってこない…。「これ」でないものなんて、意味がない…。どんどん執着する気持ちが強くなっていきます。
自分のほしい状況である「これ」へのこだわりが強くなり、相手に求めることのハードルがどんどん上がっていってしまっていないでしょうか。
様々なご相談をお聞きしていて思うのは、ご自身の性質として、完璧主義の要素が強めの方は、このハードルも上がりやすく、悩みも深くなりやすいということです。
完璧主義というと、「え、自分はそこまでではないです」と思う方も多いと思いますが、「白黒はっきりしたい、極端だねと言われる、考え方が0か100かになってしまう…そういうことはないでしょうか?」とお聞きしていくと、「私も当てはまります…」と言われる方はとても多いです。
セックスレスの場合、何が一番関係してくるかというと、
- 「相手から求められないと意味がない」と強く思ってしまう
- 「自分の願い通りでなければ嫌だ」という気持ちから抜け出せない
- 「求められる、相手からアクションしてくれる」以外のことを、相手の愛情だとなかなか受け入れられない
…こういったことがあげられます。これに加えて「そう強く思ってしまう」というのも特徴のひとつです。言い換えれば、許せるものが少ないということにもなります。それが、自分の心に負荷をかけてしまうのです。
これでなければ嫌、これが私の思う愛情なのに…が強くなるあまり、相手のことも許せなくなるし、認められなくなるし、自分のことも苦しめてしまう…という印象です。これが自動的に自分の中で起こってしまうので、なかなかつらいですね。
なので、「ハードルを下げる、ゆるめる」ことを意識するといいかもしれません。
- 誘ったら応えてくれるのは相手の愛情、と思ってみる
- 相手は自分から誘うことはしなくても、「私の願いを叶えたい」という気持ちはあるのだという見方をしてみる
- 自分が期待したより時間はすごくかかるけど、このテーマについて考えてくれていると、認めてみる
このように、「これじゃないと認めない!」から、「これと、まぁあれでも、こっちでも、よしとするか…」のように、自分の許容範囲を少しだけ広げてみる感じです。
相手の中にある「こちらの願いを叶えようとする言動」を見ようとしてみると、意外にも日常生活の中で、他の面でもしてくれていたことがあると気づけるかもしれません。(もちろん、セックスレスの悩みに影響するのは、「性の面で何ができるか」ではありますが)
完璧主義については、夫婦間・カップル間のいろいろなところに影響します。こちらの講座もその要素が強い方には非常に好評いただいています。
セックスレスの悩みで、自分が歩み寄れる限界も知っておこう。
そして、
- 求められないのはやっぱり嫌だ
- 彼・夫からのアクションが何もないのは耐えられない
- 願いを叶えてあげたいという気持ちだけでは物足りない
- やっぱり自分の思った形でないと嫌だ
というように強く感じるのなら、自分にとっても「今の彼・夫にこれ以上歩み寄ることは難しい」ということだと思います。
これも直視することが難しいことのひとつですが、自分の限界はどこなのかも、試行錯誤して見つけていかなければなりません。
相手から誘われなくても、自分から誘ったときにたまにでも応えてくれるなら、それでいいか
と思える人と、
やっぱり「求められている感覚」を得たい
と思う人がいます。どちらがいい悪いということではなく、それがその人の重視していることであり、得たい感覚であり、パートナーとの間で許容できる範囲の違いです。
まとめ
相手がとれるスタンスは、
「僕自身にはセックスは必要ないけれど(しなくても問題ないけれど)、彼女・妻がそれを願うなら、叶えてあげたいと思う」
までであるといったん考えてみようというお話をしてきました。これは、数々のご相談からの私の個人的な推測でもあります。あなたのパートナーは実際にはどうでしょうか。こういうスタンスにすら到達していないか、それよりももっと歩み寄ってくれているでしょうか。
そして、もしも相手がこのスタンスが限界だとしたら、あなたはそれを受け入れられるでしょうか。やっぱりそれは嫌でしょうか。
ここまでに書いてきた「考え方を変えるためのこと」は、できそうなことでしょうか、それとも受け入れられないでしょうか。こういったことを、自分の心に問いかけていくことで、おのずと、あなたが歩み寄れる範囲や、到達できる限界も分かってくると思います。
無理をすればいいというものでもありません。「自分はここまではできるけれど、ここからはできないなぁ」という理解はとても大切です。自分に対する優しい視線も忘れないでいただきたいと思います。
セックスレスと話し合いのテーマは、こちらの電子書籍にまとめています。(3種類の話し合いを丁寧に書いたら、5種類になりました)読んだ方からは高評価をいただいています!
セックスレスのことについては、こちらの著書『誰にも言えない夫婦の悩み相談室』でも書いています。
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